ブログ・アウトサイドストーリー 第1回
「ブログネットワークが社会を変える?」
     大林税務会計事務所 所長 大林 茂樹


ブログを通して自然発生的に集まったグループ
 インターネット上での開設が簡単なブログ(日記風の簡易型ホームページ)の登録者数が3月末現在で868万人と、総務省が発表しました。昨年9月末からの半年間で約83%増加したとのこと。このブログを単なる情報発信ではなく、同業者の情報交換の場として利用できないものか。ふとそう思ったのが、今思えばきっかけでした。
 確定申告業務がひと段落した平成18年3月17日、東京銀座で第一回税務会計系ブロガーサミットが開催されました。
 税務会計系ブロガーサミットは、ブログに情報発信をするだけでは飽き足らないブロガーたちが、ブログの持つネットワーク機能を利用して自然発生的に集まってできたグループです。これまでの同業者同士のネットワークと言えば、同じ支部、同じ地域に限定されているものがほとんどだったでしょう。しかし、ブロガーサミットのメンバーは関東から九州まで支部も地域も関係ありません。集まったほとんどの方が初対面だったのです。業者主催の会費制研究会を除けば、こうした全国規模のグループというものは皆無といっていいのではないでしょうか。

なぜブログを始めたのか
 ブログをはじめたきっかけは、私の顧問先の歯科医が「ブログで情報発信をしながら集客をすることは出来ないだろうか」と、相談を持ちかけてきたことに始まります。私自身、ホームページからの集客である程度の手応えを感じていたので、ブログからでもきっと集客が出来るはずだという確信のようなものがあったことが、後押ししたといっていいでしょう。
 ブログを立ち上げるにあたっては、既存の顧客とのコミュニケーション手段という要素は、一切切り捨てました。集客に特化したブログを自ら実践すること、そしてそれをブログ上ではなく、顧問先の方と直接会って生きたアドバイスをしていく。これが、よりよい顧客とのコミュニケーションになると考えたからです。
 事務所の電話番号に語呂合わせを取り入れ、お問合せフォームを徐々に加えて集客の手応えをつかんでいきました。そして、このノウハウをフィードバックした歯科医院のブログも集客に一役買うブログとなっていったのです。
 もともとは集客目的でしかなかったブログでした。自分にとってかけがえのない人脈を築くようになるとは、思ってもいませんでした。ましてや、自分のブログが、全国規模の同業者ネットワークを築く基になろうとは…。
  我々がブログを通じて情報交換をするきっかけとなった記事をご紹介いたします。

「震度5強で倒壊の危険!さて税務も困ったぞ…」
(前略)この事件が氷山の一角だとすると、耐震構造と信じて購入したのに、実は新耐震適合住宅ではないから各種特典を受けられませんという事例が今後出てくる可能性が…
税務署には、柔軟な対応をお願いしたいところですね。


 まだ記憶に新しい耐震偽装問題に関する記事です。新聞報道では、あくまで事実を報道するだけです。その結果、税務がどのように影響していくのかまで、その報道記事で言及することはありません。そこで、この記事に、専門家の目でわかりやすく補足説明をしたわけです。するとどうなったでしょうか。記事を掲載してからわずか数時間後、ありとあらゆるところからトラックバック(類似したテーマを自身のブログにて言及したことを通知する機能)が来たのです。私自身、とてもビックリしました。
 このテーマ(耐震偽装問題)について、税務上どう考えればいいのか。本当に何も救済措置がないのか。これを真剣に考え、ブログ上で発表してくれたのが、税務会計系ブロガーサミットのもう一人の幹事である木村聡子税理士でした。それが私と彼女との出会いです。もちろん、木村聡子税理士とは、全く面識がありませんでした。
 「税の減免など柔軟な対応をお願いしたい。何か救済措置がないものか」 
 こうした輪がブログを通じて自然発生的に大きく広がっていったのです。我々の訴えがどれだけ通じたのかわかりませんが、この記事を発表してから約1ヵ月後、税の減免をはじめとする救済措置が発表されたのです。

ブログの特性を活かした記事を作る
ブログは、鮮度が命だと思います。 私がブログを書くときに注意しているのは、できるだけ旬のテーマを取り入れるということ―――
 例えば、まだ記憶に新しいライブドア事件。「ライブドアが、株式交換という方法を駆使して急成長した」と報道されました。こういうとき、「株式交換」という聞き慣れない用語が出てくると、メディアは学者や識者に意見を求めます。学者や識者の説明は、確かに正しい。でも、一般の人から見て本当にわかりやすい説明になっているでしょうか。株式交換という説明を小学生のカードゲームに例えて説明してみました。

ライブドアの錬金術は、小学生でも知っている!
株式交換とは、ムシキングカードと同じである(中略)
ムシキングカードを子供たちが交換しようとしたとします。子供たちは、強いカードや珍しいカード一枚と弱いカード一枚を交換するでしょうか? 強いカードや珍しいカードが欲しかったら、弱いカードは一枚と言うわけにはいきませんよね。実は、株式交換も小学生がやっていることと同じなんですよ。(中略)
株式1株と交換しようと思ったら、買収される側は、100株、1000株と交換しなくてはいけませんね。結局、株式交換によって、ライブドアの持ち株比率は高まり結果的に傘下に収めることが出来ちゃうんですよ。
株式交換と言われるとなんだかとっても難しいことのように思えますが、実は小学生でも知っている理屈で動いてるんですね。


 この記事も大変反響がありました。ブログを通じて、メディアとちょっと違う視点でわかりやすく説明することを多くの人が求めていたということなのです。こういった大事件は年に数回しかありませんが、これを記事にすることによって多くの人との繋がりが自然と生まれてくるのです。
 これは、メールやホームページだと難しいと思います。ブログの持つネットワーク機能があればこそ実現することなのです。
 2005年の9月から本格的にブログの更新を続けてきましたが、わずか半年で400件近いブログとリンクすることが出来ました。この繋がりは、今こうして記事を書いている間にもどんどん広がっているのです。しかも、宣伝しているわけでも、こちらの方から宣伝をして欲しいと誰かにお願いしたことも一度もありません。旬のテーマで多くの人のハートを掴むことが出来れば、コストゼロで勝手に自分の名前と事務所名を宣伝してくれる。それがブログの大きな特徴なのです。そう考えると、ブログというのは横との繋がりだけではなく、広告宣伝ツールとしても非常に面白い素材だと言えるわけです。
 旬のテーマでちょっとヒネリを入れた記事を書いて人々の心に届けば、全く無名な若者が発信した情報であっても、それが想像を超えた大きなうねりとなっていくのです。あらゆる人たちに、チャンスが平等に与えられているのがブログの独特な世界なのです。

小さな力でも、数が集まれば世の中をも動かせるかもしれない
 税務会計系ブロガーサミットのメンバー達は、この業界(税理士業界)ではまだまだ駆け出しの部類に入る人たちです。一人ひとりが叫んでも、この業界を、この世の中を変えていくような力はありません。でも、私たちは「ブログを通じたネットワーク」という心強い味方、武器を手に入れることができました。所属する支部も地域も違うけれども、それぞれが個性を出してそれぞれの役割を果たしていけば、やがて、とてつもなく大きな仕事が出来るようになる気がしています。
 これから続いていく連載の中で、メンバー達がそれぞれの個性と役割を果たすことによって、小さな力が大きなうねりとなり、この業界を、そして日本の将来を良い方向に変えていく原動力となる、その最初の一歩となることを願ってやみません。
 
  大林茂樹(おおばやし しげき)
早稲田大学法学部卒
平成元年、株式会社東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)入社
平成4年、原会計事務所 入所
平成5年、税理士試験合格
平成11年、大林税務会計事務所 開設 
現在
大林税務会計事務所 所長
財団法人さいたま市産業創造財団 嘱託
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 嘱託
http://blog.livedoor.jp/ohbayashiblog/