吉永弁護士の「社長、他人事ではないですよ!」

中小企業の経営者にとって、税理士は最も身近な存在です。そのため、税務に限らず、公私にわたってさまざまな相談が寄せられることも少なくありません。そのような相談に応じて、各種の周辺業務に取り組んでいる方も多いでしょう。しかし、周辺業務は税理士の専門領域ではないため、対応ミスによりトラブルが生じやすいと言われています。この連載では、日本税理士会連合会顧問の鳥飼重和先生(鳥飼総合法律事務所)の監修により、税理士に寄せられることの多い相談と、弁護士から見た有効な対応方法を解説します。

第67回 ウチの景品、ダメなんですか?

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 横田 未生

吉永弁護士 安斎社長、ご無沙汰しています。売上好調との

うわさは耳にしていますよ。

安斉社長 がはは。吉永先生、お久しぶりですね。おかげさ

まで、前期の売上が前々期の2倍になってしまいましたよ。

がははははははははははは。

吉永弁護士 売上が2倍!? 安斎社長、それはすごいですね。

前期から何か新しいことを導入したのですか?

安斉社長 まあ、単純なことですよ。商品のインターネット

販売を始めたんです。

吉永弁護士 へ~、そうなんですね! 安斎社長、さすが時代

の波に乗っていますね!

安斉社長 ただ、インターネット販売を始めた当初は、それ

ほどでもなかったんですよ。

吉永弁護士 は~。何かインターネット販売が好調になる要

因があったのですか?

安斉社長 がはは。これまた単純なことですよ。「商品購入者

全員に、QUOカード500円分贈呈!」としたんです! この広

告を出した途端、一気に売上は倍増しましたよ!

吉永弁護士 なるほど~ ! それは確かにお客さんが喜びそ

うですね。

 あれ、安斎社長の会社って、イタリア製の上質な靴下なん

かも安く販売されていましたよね?

安斉社長 吉永先生、よくご存じで! 一足1000円で販売して

いますよ! これもインターネット販売で人気なんですよ!!

吉永弁護士 一足1000円!?  一足だけ購入しても、QUOカ

ードを500円分もらえるのですか!?

安斉社長 はい、もちろん!!

吉永弁護士 その方針は今後も続けていくおつもりですよね。

安斉社長 はい、もちろん!!

吉永弁護士 おっとっと。それはまずいですよ、安斎社長。

安斉社長 なんですって!?

吉永弁護士 不当景品類及び不当表示防止法、通称、景品表

示法では、事業者が顧客に対し、顧客を誘引するための手段

として、取引に付随して、過度な景品を提供することを禁じ

ているのです。

安斉社長 え、そうなんですか。

吉永弁護士 消費者が過度な景品に惑わされて質のよくない

ものや割高なものを買わされてしまうことは、消費者にとっ

て不利益なことです。このため、景品表示法では、景品類の

最高額などを規制することによって、消費者の利益を保護し

ているのです。

安斉社長 なるほど、うちが費用を負担して、お客様に喜ん

でもらえるから規制なんてないと思っていたけど、お客さん

が過度な景品に惑わされてしまい、適切な商品選択ができな

くなるとの懸念があるんですね。

 じゃあ、景品の金額について、何か基準があるんですか?

吉永弁護士 はい、あります。例えば、御社が贈呈している

QUOカードは、抽選によらずに購入者全員に贈呈している景

品なので、「総付景品」というものに該当します。この総付景

品の場合には、取引価額1000円以上のものに関して贈呈でき

る景品の金額は、その取引価額の10分の2までとなります。

そのため、御社の一足1000円の靴下に関して贈呈できる景品

の金額は、200円までとなってしまいます。御社の創業記念

等ということで贈呈しているのであれば、例外が認められる

こともあるのですが。

安斉社長 そうか困ったな~。QUOカード500円分が、景品

としてちょうどよいと思っているんだが……。

吉永弁護士 安斎社長! それならこれからは、「2500円以

上お買い上げの方に限り、QUOカード500円分贈呈!」、ま

たは、創業記念などの行事の際のみ、「商品購入者全員に、

QUOカード500円分贈呈!」というふうにしてくださいね。

【解説】

1.制度趣旨

 事業者が過大景品を提供することにより、消費者が過大景品に惑わされて質のよくないものや割高なものを買わされてしまうことは、消費者にとって不利益になるものです。また、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、これがまた消費者の不利益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。

 このため、景品表示法第4条では、景品類の最高額、総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。

2.景品の種類

⑴ 懸賞(商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供するもの)

⑵ 総付景品(商品・サービスの利用者や来店者に対して、「懸賞」によらずにもれなく提供するもの)

 ⇒ 安斎社長の会社のQUOカード贈呈は、購入者全員を対象とするものなので、「総付景品」に該当する。

3.総付景品の限度額(平成28年4月1日内閣府告示第1項)

 

 

 

 

4.例外的に許容される場合(同告示第2項)

⑴ 商品の販売もしくは使用のためまたは役務の提供のため必要な物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

 例:重量家具の配送、交通の不便な場所にある旅館の送迎サービス

⑵ 見本その他宣伝用の物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

 例:化粧品売り場のメイクアップサービス、スポーツスクールの一日無料体験

⑶ 自己の供給する商品または役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

⑷ 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品またはサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの

取引価額

景品類の最高額

1000円未満

200円

1000円以上

取引価額の10分の2

Copyright (C) 2012-2017 Business Management Service All Rights Reserved.