本日はよろしくお願いします。まずはお2人の自己紹介から伺います。まず小林さんからお願いします。

小林

株式会社ベストワン、および一般社団法人コグニティブ・サポートの小林香織と申します。介護業界に携わるなかで、もっと楽しく、自分も楽しくできるような経営をしたいと考えて、埼玉県草加市花栗でデイサービス「ベストワンFun」をオープンしました。

自分の親を入れたいと思えるような施設をつくりたかったのです。職員さんにもそう思って働いてほしいですね。そういう思いで、今頑張っています。

編集部注:

ベストワンFunは2022年12月に開設された、共生型・リハビリ特化型の短時間デイサービスである。定員18名で、看護師・理学療法士が常駐する。特許を取得したエクササイズ判定・提供システム「4 Movement Screen(4MS)」を導入し、科学的根拠に基づく運動プログラムを提供している。

続いて松永先生に伺います。

松永

私は三重県鈴鹿市で税理士法人Mパートナーズを経営しています。平成3年に開業して、もう35年になります。今は息子に代表を譲っていますが、私は主に公益法人や社会福祉法人、NPO法人といった法人を担当しています。介護事業者や社会福祉に関わるお客様もいらっしゃって、その制度を勉強しなければと思い、C-MAS介護事業経営研究会に入らせていただいて、今日に至っています。

編集部注:

税理士法人Mパートナーズは三重県鈴鹿市に本社、桑名市に第2拠点を置く。所員は鈴鹿オフィス14名、桑名オフィス2名。経営革新等支援機関の認定事務所である。業務メニューに「社会福祉法人・公益法人顧問」を掲げ、月次の会計監査から予算作成・決算、行政監査の立ち会いまでを扱う。C-MASでは三重鈴鹿支部の事務局を担っている。

松永先生はC-MASに入られて、どのくらいになりますか。

松永

10年くらいになりますね。

小林

私が入った頃にはもう入っていらっしゃったので、10年以上は絶対になりますね。

顧問先とマシンのないデイサービスを訪問

今回はどういった経緯で、小林さんの法人を訪問することになったのですか。

松永

今、介護業界は経営がすごく厳しい状況です。私はずっと会計事務所をやっていますので、顧問先の会社の分析がよく分かります。やはり利用者さんが減っていたり、稼働率が落ちたり、あるいは規模が小さいところがうちは多いので、経営がとても厳しくなっています。

そのなかで、事業転換していくにはどういう事業をやっていけばいいのかを模索していました。特にデイサービスの稼働率が落ちているというお客様が結構いらっしゃいます。小林さんがベストワンFunを立ち上げて、今度第2の施設を建てられるとお聞きして、一度そこを見学に行きませんかと顧問先の皆さんにご案内していたのです。

そうしたら、こちらの法人さんがぜひ行きたいと手を挙げられました。ほかの方にも声をかけたのですが、今日は用事があって来られず、また改めてお話をさせていただこうと思っています。

今日は、顧問先の方と一緒に来られているのですね。

松永

社会福祉法人希望の里というところです。ここは地域密着型の特別養護老人ホームと、それから定員が26人のデイサービスをやっています。

小林さんのところには、税理士の先生がよく来られるのですか。

小林

はい。C-MASさんにお世話になっているので、全国大会でお話をしたり、Zoomのセミナーに参加してくださった方が来られます。私の言っていることが、ちょっと変わっているのでしょう。マシンがないリハビリサービスですから。

松永

まず、お客様は厳しい経営をしていらっしゃるので、事業展開をするにも資金がありません。でも小林さんのやり方なら資金が少なくて済みます。少ない資金で展開できる事業を一生懸命考えていて、これはすごいと思ったのが小林さんのところだったのです。

小林

同じ草加市の青柳でも2店舗目をやりましたが、やはりマットだけあればいいのです。あとは場所をある程度借りないといけませんが、そんなに広くなくていい。マシンがなければ、マシンを投入する資金が全くかかりません。マットは1枚3万円ほどですが、マシンは1台数百万円しますので、初期投資はかなり少なくて済みます。今日、筋膜リリースをやっていただいたと思いますが、あれに使う道具も100円ショップのものです。ちょっとした小道具があるくらいですね。

松永

そうですね。そんなに大きな設備投資をしなくても事業展開ができるのがとても魅力です。また、利用者さんがすごく元気になって帰っていかれるのを見せていただき、スタッフの皆さんが笑顔で生き生き働いていらっしゃるのが印象的でしたね。

リハビリと謳いつつADLは下がる

小林

C-MASさんにお世話になって、ご縁もあって、日本全国のいろいろな介護施設やデイサービスを見させていただきました。そこで感じたのは、リハビリと謳っているのにADL(日常生活動作)は下がる、よくて維持だということです。リハビリをしたら回復するのではないのかという、不思議な普通の疑問ですよね。でも、今までの介護業界はその逆で、リハビリをやって維持できれば最高、悪くなってもしょうがないという考え方でした。そこをどうにかしたかったのです。

松永

施設さんはそうですよね。悪くなっていくのはしょうがないよね、だから維持だったらいいよね、とよく聞いていました。

小林

そのなかで自分のなかに矛盾が生じてきたのです。それも共生型を始めたいろいろなきっかけのひとつです。

松永

それにしても、よくご自分で立ち上げようと決断されましたね。

小林

だって、ほかにないですから。しかも、介護と障害を分ける理由も私には分かりません。リハビリですから、運動をするのは同じです。ですから、共生型サービスにはこだわってやらせていただきました。

編集部注:

共生型サービスは、介護保険法と障害者総合支援法の改正により2018年4月から始まった仕組みである。どちらか一方の制度の指定を受けている事業所が、条例の基準を満たせばもう一方の指定も受けやすくなる特例指定で、高齢者と障害児者が同じ空間で一体的にサービスを受けられる。それまでは、障害福祉サービスを利用していた人が65歳になるとなじみの事業所を離れなければならないケースが多く、この「65歳の壁」への対応でもある。

松永

今日ご一緒している社会福祉法人希望の里のデイサービスさんも、共生型を取ったところです。ただ、障害のある利用者さんに慣れていないとか、何か抵抗があるのか、まだスタッフさんが入っていらっしゃらないようです。そのあたりのノウハウも今日聞きたいと仰っていました。

小林

それは固定観念だと思います。障害はこう、介護はこう、という思い込みですね。今日見ていただいたとおり、基本的に障害のある方も介護の方も一緒に運動していて、何ら違うサービスを特段しているわけではありません。

障害者というと、なんとなく知的障害や、生まれ持った精神障害を思い浮かべるかもしれません。例えば、目が見えない方、耳が聞こえない方、事故で下半身が動かなくなった方も、病気の後遺症で障害になる方などいろいろな障害があるのに、どうしても知的障害などのイメージが先に入ってくるのではないかと思います。うちは知的も精神も身体も受け入れています。

デイサービス「ベストワンFun」での見学会の様子
デイサービス「ベストワンFun」での見学会の様子図を拡大して見る ↗

「やめたほうがいい」と言われるなかでの挑戦

C-MASのセミナーを受けていただいたC-MAS会員ではない先生方から、共生型というものがこの世の中にあるのを知らなかった、というお声を結構いただきます。こういった共生型のような珍しい取り組みも、C-MASで学べるようなイメージでしょうか。

小林

学べるというと大げさですが、そうだと思います。私自身が共生型をやりたいと思ったとき、ありとあらゆる経営者の、知り得る限りの人に相談しました。共生型はどうですか、と。すると100人が100人、やめたほうがいいと言いました。

なぜかと聞くと、ほとんどの人が、障害のある方は介護の高齢者を嫌がり、介護は障害を嫌がると、もう嫌というほど言われました。そうなると、言われれば言われるほどやりたくなってしまいました。逆に、なんでやるのと聞かれました。それぐらい、まだ見えない壁があったのだと思います。

松永

小濱先生からは、共生型サービスのお話を伺っていました。こういうやり方もあると知って、ぜひ取り入れていかないといけないと思いました。どんどん人口が減っていくなかで利用者さんも減っていきますし、特にご高齢の方は入院されたり亡くなられたりして、空きが出てしまいます。そこに共生型を入れていけば、稼働率も上がると感じました。

編集部注:

小濱道博氏は小濱介護経営事務所の代表で、C-MASの最高顧問を務める。小林氏は同事務所の副代表でもある。両氏は『これならわかる〈スッキリ図解〉介護BCP』『同LIFE科学的介護情報システム』(いずれも翔泳社)など4冊を共著で刊行している。

そういったところを顧問先に情報提供できるような会が、C-MASであるということですね。

松永

そうです。そういうことをいろいろ学ばせていただきました。業界のことを、全く分かっていませんでしたから。

介護に詳しい税理士がいると何が違うのか

介護や福祉業界のこと、いろいろな経営のことを学ぶことで、顧問先の介護事業者さんから喜ばれたエピソードはありますか。

松永

いえ、うちは申し上げたとおり小さな介護事業者さんが多いので、そんなに喜ばれたということはなくて。介護のことについては、向こうのほうがプロですからね。