資産税特化から総合型へ

弊誌が貴グループを取材するのは、2016年7月号、2022年7月号に続いて3回目になります。創業以来の主力は相続・事業承継を中心とした資産税で、累計7500件以上を手掛けてこられました。本日は岩永代表、出川共同代表、ミライベース東京オフィス長の谷之口さん、人事部マネージャーの浪方さんに、貴グループの現在の取り組みについて伺います。

岩永

2022年に取材していただいたときは、人員は100名を超えたものの、「創業10年(2023年)までに売上10億円」を目指して走っている最中でした。当時の僕は、自分で案件を持ちながら幹部のマネジメントも担うプレイングマネージャーでしたが、組織の拡大に伴い、拠点・部門の責任者(GM)に運営を任せ、僕と出川は経営に専念する体制へと切り替えました。

これによって、大手企業との提携に注力できるようになり、証券会社を中心にBtoBtoCの提携ネットワークが一気に拡大しました。現在では、案件の約9割が提携先からのご紹介によるものです。こうした紹介基盤の拡大を背景に、売上は直近3年間で約2・6倍となる26億2000万円に伸長し、2026年6月期にはグループ総勢223名の規模に成長しました。

また、全国に支店を持つ提携先のニーズに応え、各地域の相続市場をカバーするため、直近3年間で9拠点を新たに開設しました。拠点網の拡充とともに、どの地域でも質の高いサービスを提供できる体制づくりに取り組み、お客様アンケートでも98%以上の満足度を維持しています。

出川

一方、相続のマーケットは2040年頃にピークを迎えます。今後も資産税案件だけで売上を拡大していくことは難しいでしょう。そこで今期(7月)から方針を変えました。これまでは資産税案件を取り込むために拠点を拡大してきましたが、これ以上は攻めない方針です。主要都市にはひととおり拠点を置けましたし、なにより相続税申告は地場の税理士が強く、横展開を続けても取れるパイは見えているからです。

岩永

それに、我々がグループビジョンに掲げる「日本のミライに豊かさを」の実現には、国内企業の99・7%を占める中小企業の成長が必要不可欠です。だからこそ、このタイミングで税理士の本業とも言える顧問業に回帰し、中小企業の成長支援にも対応できる総合型事務所へと本格的に舵を切りました。その一環が、ミライベース東京オフィス(新宿野村ビル37階)の開設です。2022年の自社ビル(福岡事務所)建設を除けば過去最大規模の、約8000万円を投じています。ここからがまた新たなチャレンジです。

「承継」だけでなく「成長支援」も

前回の取材では、顧問業務はグループの税理士法人IU Managementで手掛けていました。今後はグループ母体の税理士法人アイユーコンサルティングでも税務顧問に本格対応する方向に転換し、その象徴がミライベース東京オフィスということですね。オフィス長の谷之口先生に、顧問部隊「ミライベース」のコンセプトと今後の抱負を伺います。

谷之口

税理士法人IU Managementは、あくまで相続・事業承継案件に対応する中で派生した顧問業務の受け皿として機能させていきます。一方で「ミライベース」は、成長意欲の高い中小企業の新規顧問獲得に特化した攻めの部隊です。ここでは、これから成長したい経営者に高い目標を持っていただけるよう、「過去」ではなく「ミライ」の会計を支援するサービスを提供していきます。

具体的には、どのようなサービスを用意しているのでしょうか。

谷之口

基本となる税務顧問サービスは、あえて「凡事徹底」に特化させています。というのも、税務顧問の現場では、財務分析や経営助言といったコンサルティング業務まで対応していながら、その対価が十分に反映されず、通常の顧問料の範囲内に収まってしまうケースも少なくありません。そこでミライベースでは、基本となる税務顧問と、経営課題の解決に向けた成長支援サービスを明確に分け、それぞれの提供価値に見合った料金体系を設けています。

税務顧問については、自社開発のシステムを活用し、担当者によらず一定の品質でサービスを提供できる体制を整えています。また、顧問先専用LINEでは、税に関する情報提供や独自のコンテンツを配信しています。顧問料は、売上1億円未満の企業で年間60万〜80万円ほどです。

成長支援サービスは2つ用意しています。1つ目は、予実管理サービス「ミライサイクルライト」です。初期費用5万円で単年度の予算を策定し、その後は月額3万円で毎月の実績を確認しながら、計画と実績の差を把握し、目標達成に向けた進捗管理を支援します。

2つ目の「ミライサイクル」は、税務の枠を超え、企業の成長そのものを支援するサービスです。売上1億円の突破や、さらなる事業拡大を本気で目指す経営者を対象に、目標達成まで伴走します。単に経営計画を策定するだけでなく、KGIやKPIを設定し、目標を日々の具体的な行動にまで落とし込むのが特徴です。1日単位の行動計画まで明確にし、その実行と改善を継続的に支援することで、着実な目標達成を目指します。初期費用は30万円で、計画策定には丸2日間をかけます。その後は月額7万円から、企業規模や成長段階に応じた支援を提供していきます。

いずれも主なターゲットは売上3000万〜3億円規模の会社で、東京のミライベースのメンバー、そして北九州事務所に併設した「ミライベース北九州オフィス」のメンバーが中心となり支援していきます。

7月に貴グループに参画したRIMONOとの一体支援では、何が変わるのでしょうか。

谷之口

企業が成長する過程では、設備投資や資金繰りといった財務面の課題だけでなく、人材採用や労務管理、組織づくりなど、「ヒト」に関する課題も生じます。こうした課題は互いに密接に関係しているため、税務と労務を別々に考えるのではなく、一体的に支援することが重要です。

RIMONOのグループ参画によって、税務・財務に加え、人事・労務や組織開発の領域まで、グループ内で連携しながら支援できる体制が整いました。また、企業が成長し、いずれ事業承継や相続といった課題に直面した際には、当グループが強みとする資産税部門と速やかに連携することができます。

ミライベースが目指すのは、単なる税務顧問サービスの提供ではありません。企業の成長段階に応じて必要となる専門サービスをつなぎ、経営者を長期的に支えることです。このオフィスがグループ内の各部門をつなぐハブとなり、企業の成長から承継まで一貫して支援できる体制を築くことで、グループ全体のさらなる発展にも寄与していきたいと考えています。

営業は専任者が担い、税理士は税務に専念

今後どのように顧問先を増やしていかれるのでしょうか。

出川

顧問先の獲得についても、これまで培ってきた紹介ネットワークを生かしていく方針です。特に保険業界では、BtoBtoC戦略の一環としてセミナーや情報発信を重ねてきたことが、現在の紹介につながっています。そのほかにも、中小企業向けのコンサルティング会社や上場企業、DX関連のサービスを提供する企業など、幅広い業種とのネットワークが広がっており、新たな顧問先をご紹介いただく機会も増えています。

一方で、これまでは税理士自身がセミナー登壇や関係構築を通じて営業活動を行い、案件の獲得から実務まで幅広く担ってきましたが、今後は営業活動から契約締結までを専任メンバーが担当し、税理士が専門性を生かした業務に集中できる体制へと移行していきます。

所長先生のなかには、事務所経営から実務まで奮戦し、大変なご苦労をされている方が少なからずいらっしゃいます。その構造を変えようとされているわけですね。

岩永

そうですね。これまでの税理士業界は、税理士個人の能力や経験に依存する部分が大きかったと思います。しかし、組織が成長していくうえでは、税理士が営業から実務、マネジメントまで、すべてを担う体制には限界があります。

これからは、税理士以外の人材も含め、それぞれの専門性や強みを生かして役割を分担する「企業型」の経営が重要になってくると考えています。その先駆けとなったのが、ベンチャーサポートグループさんでしょう。営業を組織として担い、税理士は税務の最終判断や品質管理に専念するという分業体制を、いち早く確立されました。

当グループでも、税理士が担うべき専門的な判断や責任は大切にしながら、それ以外の業務は適切に役割分担していく方針です。税理士一人ひとりの力に頼るのではなく、組織全体で高い品質と生産性を実現できる体制を目指しています。

それはつまり、営業を担う人材は別に置く、ということですね。

出川

はい。その一環として、今年4月に営業統括部を新設しました。大手コンサルティンググループで役員を務め、長年にわたり営業の第一線で実績を積んできた鈴木を部長に迎え、同業や他業種とのアライアンスを組織的に進めているところです。

岩永

「企業化」という視点では、人事と広報を早くから置いたこともアドバンテージになっています。人事の浪方は各所から取材に呼ばれますし、広報の赤時も座談会などに出させていただいています。組織としての成長を考えると、税理士の力単体だけでは限界があります。税理士は本来、税務の専門家であり、必ずしもマネジメントを得意とするわけではありません。だからこそ、それぞれの専門性を生かして役割を分担することが重要だと考えています。

営業を組織で担うにあたって、何を大事にされていますか。

岩永

大前提として、僕たちは税務の専門家であって、営業会社になるつもりはありません。ただこの業界には、豊富な専門知識を持ちながら、お客様に自分から提案をしない事務所も少なくありません。そのすき間に他業種の会社が入り込み、お客様が必要のない商品を勧められてしまうこともあります。もし僕たちが専門家として先に提案できていれば、「その商品は御社には必要ありません」と自信を持って言えます。組織として営業活動に取り組むことは、お客様を守ることでもあると考えています。

出川

我々はずっと手数料商売をしてこなかったので、先ほどの売上26・2億円も大半は申告・顧問などの報酬です。ただ、それだけでは、生産性を上げてもメンバーの給料を十分に上げきれません。そこで、お客様に本当に必要なものだけを吟味して提案し、クロスセルによる手数料収入の拡大にも取り組み始めています。もちろん軸足はあくまで税務で、「不要な商品は提案しない」という姿勢は変えません。

AIやRPAの活用によって定型業務を効率化し、生まれた時間をお客様への提案や課題解決に振り向けていく。そのためにも、今後は申告書の作成だけを担う内勤者の新規採用は積極的には行わず、お客様に付加価値を提供できる人材の採用・育成に力を入れていく方針です。

業務システムは社内で作る

貴グループは2025年にDXソリューション部を発足させ、AI活用・DX化の推進でグループ全体・年間延べ8000時間以上の作業時間を削減されたと伺っています。今はどんなことに取り組んでいるのでしょうか。

岩永

すでに稼働しているものでいえば、相続税申告書の作成RPA、遺産分割協議書の作成VBA、請求書の自動作成、預金推移などの自動作成・整理、メールの誤送信防止システムなどがあります。そのほかに生産性や売上、顧客満足度を横断的に分析するツール開発など、さまざまな開発案件が同時並行で動いています。最近だと、約4000万円を投じて、AI活用を前提とした基幹システムの全面的な入れ替えにも動いています。すべての情報を1か所に集約し、拠点・部門間を横断してお客様のニーズをつかめる仕組みを作っており、来年4月のリリースに向け開発中です。

出川

税務顧問サービスでは、AIを活用した独自システム「アイユー財務ナビ」の開発を進めています。現在は試作段階ですが、必要な資料を所定のフォルダに格納するだけで、会計処理から申告書の作成までを一気通貫で行える仕組みを目指しています。また、過去3期分の財務データをもとに、月次・決算の分析や税負担の軽減につながる提案を自動で提示する機能も備えています。会計ソフトとも連携し、企業に関する情報を一元管理することで、その会社の経営状況や課題を把握することが可能です。

さらに、AIチャットボットも搭載しています。企業の財務情報だけでなく、地域ごとの情報とも連携することで、活用できる可能性のある補助金や助成金、税制上の特例などを自動で提示する仕組みです。これまで担当者の経験や知識に頼っていた情報収集や分析をAIで支援することで、業務効率化はもちろん、お客様一人ひとりに対する提案の質も高めていく重要な基盤になると考えています。

AIチャットボットは職員にとっても便利でしょうが、顧問先にも喜ばれそうですね。

出川

そうですね。ただ、お客様向けに公開するかどうかは、まだ検討段階です。AIによる税務相談が税理士法上どこまで認められるのか、慎重に見極める必要があるためです。仮に公開が実現すれば、日常的に寄せられるご質問への対応をAIに任せることで、大幅な業務効率化が期待できます。

また、相続分野でも、申告書の自動作成システムの開発が約7割まで進んでいます。必要な資料を取り込むだけで申告書の作成まで自動化する仕組みで、実用化によって担当者の作業時間を大幅に削減することが可能です。こうした仕組みを活用することで、担当者には従来の3倍の生産性を目指してほしいと伝えています。同時に、コンサルタントはお客様の経営課題に関する相談や提案など、人にしかできない付加価値の高い業務に振り向けられるよう、社内研修や組織体制の整備も進めています。

AI時代の働き方

AIで効率を上げる目的は、どこにあるのでしょうか。