クラウド会計にいち早く取り組んで成長

本日は、DIGグループ代表の小西先生にお話を伺います。先生には2025年6月号で取材をしていて、関連企業だった株式会社アーリークロスの独立や、事務所のブランディング戦略などについてお話を伺いました。

株式会社アーリークロスは企業型DC支援事業に取り組む企業ですが、中小企業を支援するという思いは同じで、独立後も良好な関係が続いていると伺っています。

そのときの取材は独立の話が中心で、小西先生の事務所経営戦略について踏み込んで聞けなかったので、今回改めてお時間をいただきました。

先生は2012年に福岡で独立されましたが、その頃はちょうど、クラウド会計が登場した時期でしたね。いち早く取り組まれたと伺っています。

小西

そうですね。クラウド会計が出たばかりの頃に独立し、すぐ導入しました。

当時はまだ、クラウド会計の知名度は高くなく、多くの会計事務所が慎重に見極めていた時期でした。しかし、ゼロからスタートしたばかりの僕たちは、会計ソフトのしがらみがなかったので、クラウド会計に積極的に取り組んでいきました。当時はそのような事務所が目新しく、顧問先が増えていった理由のひとつとなっています。

今となっては正しい選択であることは間違いないですが、新しいものに取り組むことにはリスクもあります。その当時、リスクがあったかもしれないクラウド会計に取り組んだ理由を教えてください。

小西

開業したとき、事務所の特徴を出していこうと思いました。ただ、税務顧問のサービスで、「ここが強みです」とご説明しても、専門的すぎて違いがお客様には伝わりにくい、という課題がありました。お客様から見れば、「難しいことを言われても、同じ税理士の先生ですよね」と感じてしまうのではないかと思います。

もちろん、顧問契約をしていただいたあとは仕事の違いを実感していただけると思いますが、初めてお会いするお客様に「うちの強みはこれです」と分かりやすくお伝えできるものが必要だと思いました。

そのなかで、僕たちの特色は何かと考えたとき、新しいテクノロジーやツールに強いことではないかと思いました。そこで、当時の新しいテクノロジーの象徴的存在だったクラウド会計を推していくことにしたのです。

20名規模から160名規模へ急成長

個人事務所から法人化への流れについてお聞かせください。

小西

アーリークロス会計事務所との統合を機に、2018年10月に法人化しました。

アーリークロス会計事務所は、税理士の小山さん(現・DIG税理士法人副代表の小山寛史氏)が個人事務所として2017年に開設し、花城さん(現・株式会社アーリークロス代表の花城正也氏)とともに運営していた事務所です。

小山さんや花城さんとは、クラウド会計への取り組みなど、考え方が一致するところがたくさんありました。話しているうちに意気投合して、「それなら一緒にやりましょうよ」という話になり、2つの事務所が統合したのです。

統合したときのスタッフ数は何名くらいでしたか。

小西

20名くらいですね。

DIGグループは、現在は約160名と伺っています。20名規模から8年で8倍の成長です。短期間に急激に成長したのですね。このような成長の青写真は描いていたのですか。

小西

具体的な数字まではありませんでしたが、当時から100名規模くらいにはしていかないといけないと思っていました。

規模の拡大を目指した理由を教えてください。

小西

当時、痛感していたのが、個人事務所の限界です。個人事務所のころは、僕の目が届く範囲が事務所の成長の限界という状況でした。10名くらいの規模でしたが、これ以上手を広げるのは難しいところに来ていました。

クラウド会計が普及しつつあり、それに対応してほしいというお客様からの相談が寄せられているのに、対応しきれなくなっている。これは少し情けないと思いました。

声をかけてくださるお客様にしっかり対応したいという思いが、規模拡大に舵を切った理由になっています。

勢いから信頼へ

貴グループは、2025年5月から、社名を「DIG」に変更しました。まず、社名を変えた背景からお聞かせください。

小西

2024年に税理士法人Besoが加わり、東京事務所も開設して、規模が大きくなっていきました。当時すでに150名を超える規模になっていて、自分たちのあり方が変わってくるのを感じていました。

アーリークロスも、勢いがあって駆け抜けていくような印象を与える、とてもよい名前だと思っています。ただ、地域を代表する規模の事務所にふさわしい名前にしたい。勢いは失いたくありませんが、そこに信頼感と親しみやすさを両立させたブランドにしていきたいと考えました。

新しい社名「DIG」には、どのような思いを込めたのでしょうか。

小西

「DIG」は、当グループのミッションである「ワクワクする未来を共に創り、次世代につなぐ」を表す「Dream Incubation Group」の頭文字です。

また、「dig」という動詞は、「掘る」「掘り下げる」という意味を持ちます。お客様の課題を深く理解し、根本的な解決策を見つけ出す姿勢を象徴しています。

さらに、「掘り下げる」ことはしっかりとした基盤を築くことも意味します。

「日本を代表する会計事務所グループを創る」というビジョンの実現に向け、さらなる発展を目指すという思いも込めました。

これは創業者である僕だけの思いでなく、グループのメンバーがつくった理念と価値観を反映したものです。

社名を決めるに当たり、まず「自分たちらしさとは何か」を掘り下げました。それを社名に込めるため、社内から10名ほどのプロジェクトメンバーを選出しました。

現在の社名をどう思うか、新しい社名をどうしたらよいかといった意見を社内から集め、ディスカッションを繰り返しました。

さらに、コピーライターとデザイナーの方にも入ってもらい、僕たちの考えに沿った社名を5つほど提案してもらいました。

そこから全社でアンケートを取りました。どの候補がよいかだけでなく、なぜその候補がよいのかまで書いてもらい、それをもとに、もう一度プロジェクトチームで議論して決めました。

事務所の名称は所長先生の一存で決められることも多いですが、スタッフの意見を重視して決めたのですね。

小西

はい。スタッフには「ここは自分たちの会社だ」という思いを持ってほしいと考えています。そこで社名を決めるプロセスにも参加してもらい、自分たちで決めたという実感を持ってもらおうと思いました。

DIGグループのミッション・ビジョン・バリュー。紙面52ページの図版とキャプション
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「楽しんでナンボ」

ミッション・ビジョン・バリューのうち、バリューも新しくしたそうですね。

小西

はい。ミッションとビジョンはほぼ変えていませんが、バリューを新しくしました。

バリューを変えたのは、前期に、人の定着や採用の面でうまくいかない部分があったからです。そのとき、僕たちが大事にしている価値観を明確にしたほうがよいと考えました。事務所のバリューに合う人に入ってほしいですし、バリューに沿って仕事をしていきたいです。

バリューは、これまでの3つから7つに増やしました。最後のひとつは、「楽しんでナンボ」です。仕事は忙しくて大変なこともたくさんあります。ただ、僕も含めた幹部層には、「やはり仕事も楽しんでナンボだよね」という思いがありました。

そうした気持ちを忘れたくありませんでしたし、皆に伝えたかったので、言葉にしました。