電子申告ファイルだけで約20枚の決算診断書

本日は、株式会社NTTデータの矢口統括部長、渡辺部長、柿沼課長に、2026年6月に提供を開始した会計事務所向けの財務コンサルティング支援サービス「財務のみかた」について伺います。

貴社は、会計業界では税務申告ソリューション「達人シリーズ」のベンダーとして知られた存在です。ただ、どちらかというと金融機関や大企業が顧客の会社という印象がありますので、会計事務所向けのコンサル支援サービスをリリースしたことには意外性があります。

しかも「財務のみかた」は、会計事務所が金融機関の視点を踏まえて、顧問先の財務支援を行えるようにするサービスだと聞きました。

なぜNTTデータが、このような会計事務所向けのコンサル支援サービスを手がけたのですか。

矢口

ご指摘のとおり、当社の主要なお客様は、官公庁や金融機関、大企業です。

そして私どもの第三金融事業本部は、地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、JAバンクに共同型のバンキングシステムを提供している組織です。そのなかのe-ビジネス事業部は、1981年に提供を開始した金融業務の自動化サービス「ANSER」を担当していて、いまは全国500以上の金融機関にお使いいただいています。

その一方で、会計事務所の先生方とも深い関わりがあり、当社が提供する税務申告ソリューション「達人シリーズ」は、約1万3000の会計事務所にお使いいただいています。

先生方と金融機関の双方に深い関わりのある私たちが、お役に立つサービスを作りたいという発想から生まれたのが「財務のみかた」です。

全ての企業が決算と申告を必ず行うわけですが、そのときに作成される電子申告ファイル(拡張子.xtx)を活用することで、先生方が決算診断(財務分析)を容易に実施できるようにするのが、「財務のみかた」のコンセプトです。全ての顧問先に無理なく行えるよう、職員さんでも手軽に使える工夫をしています。

また、「金融機関が企業の財務状況をどう見ているのか」という金融機関目線を意識した分析・対策の提示ができるようにしました。会計事務所の先生方、金融機関、そして顧問先企業にとって、三方よしとなるモデルを目指しています。

渡辺

中小企業の経営者に「一番信頼しているステークホルダーは誰ですか」と伺うと、金融機関や先生方のお名前が出てきます。日頃から財務諸表をご覧になっているのは、やはり税理士の先生です。ですから、先生方の顧問先支援のためのツールを作るのが一番よいと考えました。

柿沼

企業経営において、会計、税務、財務はひとつながりのものです。この3つを三位一体で見てはじめて、分かるものがあります。このことは、税理士の先生方がよくご承知のことだと思います。

そして、中小企業の会計、税務、財務を全て見られるのは税理士の先生だけだと思います。私たちが先生方のために「財務のみかた」を開発した理由はそこにあります。

「財務のみかた」の概要を教えてください。

渡辺

「財務のみかた」は、先生方が決算・税務申告時に作成する電子申告ファイルを登録するだけで、顧問先企業の財務情報の分析、課題の抽出、実効性のある対策提示までを自動出力するクラウドサービスです。

クラウドサービスですのでインストールは不要で、いまお使いの会計ソフトや税務申告ソフトが何であっても使えます。

柿沼

具体的な操作は、電子申告ファイルを選んで、業種を選んで、確認ボタンを押すだけです。それだけで、約20枚の簡易診断書が生成されます。分析に必要な数字はすべて電子申告データに入っていますので、従業員数などをあらためて入力していただく必要はありません。

さらに深い分析や具体的な提案が必要な顧問先企業に対しては、より踏み込んだ財務コンサルティングができる詳細診断書を生成する機能も、10月に実装される予定です。

電子申告ファイルだけで決算診断書が生成されるのは便利ですね。

柿沼

はい。手軽に生成できますが、その内容は一般的な財務分析ツールとは一線を画するものであると自負しています。

先生方はよくご存じだと思いますが、電子申告ファイルには、税務申告書(別表)、財務諸表、勘定科目内訳明細書などが格納されています。このうち、財務諸表をもとに財務分析を行うツールは珍しくありません。

「財務のみかた」は財務諸表だけでなく、税務申告書(別表)や勘定科目内訳明細書まで読み込んで分析します。そのため、単なる評論ではなく、伴走支援につながる具体的な提案ができることが最大の特徴となっています。

決算診断を、会計業界のスタンダードに

「財務のみかた」が他のツールとは一線を画する理由のひとつが、会計業界で培われてきた決算診断の考え方を踏まえながら、金融機関の視点を取り入れていることなのですね。

渡辺

はい。単なる財務分析で終わるのではなく、顧問先企業の課題を明らかにし、改善に向けた具体的な対策まで提示できることを重視しています。

柿沼

電子申告ファイルを登録するだけで診断できるため、決算診断をより多くの顧問先に、より手軽に提供していただけると考えています。

税務はもちろん、財務も会計事務所の基幹業務であると、我々は考えています。このサービスを会計業界のスタンダードにしていきたいですね。

会計業界で培われてきた決算診断の考え方に、金融機関の視点と電子申告データの活用を組み合わせたわけですね。

しかも、電子申告ファイルの登録だけで手軽に使えるのは大きな特徴だと思います。

渡辺

電子申告ファイルは、税理士の先生方が持っている「データ資産」だと考えています。

例えば、勘定科目内訳明細書の「預貯金等」(右肩①)と「借入金及び支払利子」(右肩⑪)を突き合わせれば、「どの銀行に預金がいくらあり、どの銀行からいくらを何%で、何を担保に借りているか」まで把握できます。ここまで踏み込んだ企業情報を持っていることが会計事務所の強みです。

一般的な財務分析ツールは財務諸表しか見ませんから、分析しても「借入金が5000万円ある」といったことしか分からず、顧問先に助言しようにも「借入が多いですね」といった評論しかできません。

しかし、勘定科目内訳明細書まで読めていれば、「金利の高いA銀行の借入を、B銀行の預金を使って優先返済し、C銀行との新規取引を検討したらどうですか」といった具体的な提案が可能になります。

豊富な機能で顧問先指導をサポート

「財務のみかた」でどのような診断が可能なのか、詳しく教えていただけませんか。

矢口

「財務のみかた」の機能は大きく3つに区分されていて、①顧問先企業の現状を可視化・分析する機能、②検討すべきポイントを抽出する機能、③具体的な対策を提示する機能があります。

診断書は簡易診断書と詳細診断書の2種類があり、簡易診断書でも20枚ほどの内容になります。電子申告ファイルを登録するだけで簡単に生成できますので、全ての顧問先に決算診断を提供していただけます。

詳細診断書は、追加の情報を入力していただくことで、より深い分析と具体的な提案が必要な顧問先のためにご活用いただけます。

まず簡易診断書のほうから教えてください。

柿沼

入り口は、「決算の推移表」と、「売上高と借入金の比較」です。金融機関が見るのは単年度の黒字赤字ではなく経年のトレンドですし、借入金も額でなく返済原資とのバランスですから、そこに合わせています。

柱になるのが総合診断です。企業の財務を「攻める力」と「守る力」に分けて見ます。それぞれの力を項目ごとに得点化し、総合得点を出し、得点に応じた経営体力のタイプまで表示します。

難しい専門用語を使わなくても、診断書を見せながら「前回よりも点数が上がりましたね。特に『攻める力』がつきましたね」といった説明ができますので、数字が苦手な経営者との対話の糸口になります。

資金繰りのほうはいかがでしょうか。