1点200万円未満は原則として減価償却資産に
法人税法施行令は、「時の経過によりその価値の減少しないもの」を減価償却資産から除いている。ただ、美術品等が時の経過で価値が減るかどうかを1点ずつ判断するのは実務上難しいため、法人税基本通達7-1-1は一種の外形基準として、取得価額が1点100万円以上の美術品等を、原則として価値の減少しない資産(減価償却資産に当たらないもの)と扱っている。
改正案は、この金額を「100万円」から「200万円」に改める。1点200万円未満の美術品等は、時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除き、減価償却資産と扱う。1点200万円以上でも、時の経過によりその価値が減少することが明らかなものは減価償却資産として扱う点は今と同じだ。
古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値や希少価値があり代替性のないものは、金額の基準とは別に価値の減少しない資産と扱う。価値が減少することが明らかなものの例を示す注書きも変えない。例として挙げるのは、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の人が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く)として取得するもののうち、移設が難しくその用途にしか使わないことが明らかなもの。かつ、ほかの用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものだ。個人の美術品等を扱う所得税基本通達2-14も同じように改める。
文化庁の要望と調査データを受けて
国税庁の改正案の概要によると、今の100万円の基準は、評価の確立していない新鋭作家のデビュー作が1点60万円から80万円で取引されている実態や、市場で一定の評価を得られる作者かどうかは一般に作品の価格が100万円を超えるかどうかで評価できるという専門家の意見などを踏まえ、「金額的重要性」も考えて設けたものだ。
今回、国税庁は文化庁から、新鋭作家の作品の取引価格に関するデータと、法人に対する百貨店での売上作品数に関するデータ・分析結果の提出を受けるとともに、金額の基準を200万円に引き上げるよう要望を受けた。これを検討した結果、今の基準は取引の実態と乖離していると認めたとしている。
前回の見直しは2014年
国税庁が2014年(平成26年)12月19日付の通達の改正について出した趣旨説明によると、改正前の通達は、美術関係の年鑑等に載っている作者の書画・彫刻・工芸品等を原則として減価償却資産に当たらないものとしていた。そのうえで、書画骨とうに当たるかどうかがはっきりしない美術品等で、取得価額が1点20万円(絵画は号2万円)未満のものは減価償却資産として扱えるとしていた。
これらの基準は1980年(昭和55年)に定めたもので、30年余りがたち、美術品等の多様化や経済状況の変化などで、減価償却できない美術品等の範囲が取引の実態と乖離するケースが見受けられるようになったとして、取得価額1点100万円を基準とする今の形に改めた。この改正は2015年1月1日以後に取得する美術品等から適用された。
すでに持っている美術品等の扱い
今回の改正後の扱いは、2027年1月1日以後に取得する美術品等に適用し、それより前に取得した美術品等は従来どおりとする。ただし法人では、同日前に取得した美術品等のうち、改正後の基準で判定すると減価償却資産となるもの(取得価額が1点100万円以上のものに限る)で、同日以後最初に開始する事業年度(適用初年度)に事業の用に供しているものは、適用初年度から減価償却資産として扱うことを認める。
この場合、減価償却の計算などでは、その美術品等は適用初年度開始の日に取得したものとする。事業の用に供した日も同じ日とみなすが、適用初年度に事業の用に供したものは、このみなしから除く。適用初年度は事業年度によって異なり、例えば毎年4月1日に事業年度が始まる法人では2027年4月1日に始まる事業年度、1月1日に始まる法人では2027年1月1日に始まる事業年度になる。
個人では、2027年1月1日に有する美術品等(改正後の基準で減価償却資産となり、取得価額が1点100万円以上のもの)について、同日から減価償却資産として扱うことを認め、同日に取得し、事業の用に供したものとする。
意見の締切は11月28日
意見は、e-Govの意見提出フォームでは11月28日23時59分まで、FAXや郵便等では同日必着で受け付けている(FAX・郵便等の宛先は国税庁課税部法人課税課審理第1係)。意見には氏名または名称、連絡先と理由を付記する。国税庁は、寄せられた意見に個別には回答しないとしている。
出典
国税庁「『法人税基本通達の制定について』(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)に対する意見公募手続の実施について」(2026年10月30日、e-Govパブリック・コメント 案件番号410080069。別添(改正案の概要)、別紙(新旧対照表))
国税庁「平成26年12月19日付課法2-12ほか1課共同『法人税基本通達等の一部改正について』(法令解釈通達)の趣旨説明」
国税庁「法人税基本通達」第7章第1節第1款「減価償却資産」(7-1-1 美術品等についての減価償却資産の判定)