承継成功の鍵はその先にある
会計事務所の事業承継やM&Aを考える際、どうしても注目されやすいのは、「誰に譲るのか」「どのような条件で譲るのか」「契約をどのように進めるのか」といった場面です。もちろん、これらは重要な論点です。しかし、承継の本当の意味は、契約が成立した時点で完結するものではありません。
むしろ大切なのは、その後です。
承継後、職員が安心して働き続けられるか。顧問先が不安なく相談を続けられるか。事務所としてのよさを残しながら、新しい体制のもとで発展していけるか。こうした視点を持たずに進めてしまうと、形式上は承継が成立しても、その後の運営に課題を残してしまうことがあります。
職員の安心が未来を築く
会計事務所の価値は、売上や顧問先数だけで測れるものではありません。日々の業務を支える職員の存在、顧問先との信頼関係、長年積み重ねてきた対応の姿勢、地域や業界のなかでの立ち位置など、数字には表れにくい要素も大きな価値です。だからこそ、承継後を見据えた事務所づくりが重要になります。
まず大切なのは、職員への配慮です。
承継やM&Aは、代表者にとって大きな決断であると同時に、職員にとっても大きな環境変化です。経営者が変わることで、働き方や待遇、業務の進め方、人間関係がどう変わるのか、不安を感じるのは自然なことです。
そのため、承継後の体制づくりでは、急激な変化を避け、職員が安心して新しい環境に移行できるようにすることが欠かせません。既存の業務フローや担当関係をすぐに変えるのではなく、まずは現状を理解し、職員の声を聞きながら、必要な改善を段階的に進めていく姿勢が求められます。
特に会計事務所では、職員が顧問先との関係を支えているケースが少なくありません。顧問先は、事務所そのものだけでなく、日々対応してくれる担当者にも信頼を寄せています。つまり、職員の安心は、そのまま顧問先の安心にもつながります。
顧問先との信頼も継承する
次に重要なのが、顧問先への丁寧な説明です。
代表者が変わる、事務所名が変わる、担当体制が変わる。こうした変化は、顧問先にとって少なからず不安材料になります。たとえサービス内容が大きく変わらないとしても、「これまで通り相談できるのか」「料金や対応は変わるのか」「自社のことをきちんと理解してもらえるのか」といった疑問が生じます。
だからこそ、承継後は顧問先に対して一方的に通知するだけでなく、安心してもらえる説明が必要です。何が変わり、何が変わらないのか。これまでの関係をどのように引き継ぐのか。新しい体制で、どのような支援を行っていくのか。こうした点を丁寧に伝えることで、顧問先との信頼関係を維持しやすくなります。
また、承継を発展につなげるためには、事務所運営そのものを見直す機会として捉えることも大切です。これまで代表者の経験や判断に支えられてきた業務を、次の体制でも安定して継続できるようにする。業務の属人化を減らし、情報共有や進しん捗ちょく管理の仕組みを整える。職員が役割を持ち、組織として力を発揮できる体制をつくる。こうした取り組みは、承継後の事務所を強くする土台になります。
もちろん、全てを一度に変える必要はありません。むしろ、承継直後に急ぎすぎることは避けるべきです。大切なのは、守るべきものと変えていくべきものを見極めることです。事務所のよさや顧問先との関係性は大切に残しながら、将来に向けて必要な仕組みや体制を少しずつ整えていく。その積み重ねが、承継を単なる引き継ぎで終わらせず、発展へとつなげていきます。
信頼を未来へつなぐ
承継後の事務所づくりに正解はひとつではありません。事務所の規模、職員構成、顧問先の特徴、地域性、譲渡側・譲受側の考え方によって、進め方は異なります。しかし共通して言えるのは、承継は「終わった後」が重要だということです。
職員が前向きに働ける環境をつくること。
顧問先が安心して相談できる関係を守ること。
事務所としての強みを次の体制で生かすこと。
そして、新しい発展の可能性を見いだすこと。
これらを意識して承継後の体制を整えていくことが、これからの会計事務所には求められます。承継は、単に代表者や経営主体が変わる出来事ではありません。これまで築いてきた信頼を受け継ぎ、次の時代に合った形で育てていくための機会でもあります。だからこそ、承継を考える際には、契約までの道筋だけでなく、その先の事務所づくりまで見据えて準備を進めていくことが大切です。
会計事務所事業承継支援センター
センター長 加藤剛
会計事務所事業承継支援センターのご案内
株式会社実務経営サービスは、会計事務所のM&Aを支援する「会計事務所事業承継支援センター」を運営しています。
当センターでは、所長先生のご意志や、職員・顧問先との関係性を尊重し、単なる「売買」ではなく、「承継と繁栄」を実現するM&Aをお手伝いします。
会計事務所のM&Aにはある程度の基本的な進め方はあるものの、所長先生のご事情や事務所の背景により、その対応はひとつとして同じではありません。当センターでは、所長急逝による緊急対応、高齢所長の引退支援、税理士法人同士の経営統合など、さまざまなケースに柔軟に対応してまいりました。業界構造への深い理解と、士業に特化した支援体制で、安心と納得のマッチングをご提供いたします。
会計事務所事業承継支援センターでは、所長先生のための相談窓口(通話無料・相談無料・秘密厳守)を設けていますので、お気軽にお問い合わせください。
【フリーコール】0800(111)1945
(担当:加藤、受付時間:平日9~17時まで)
会計事務所事業承継支援センターのサイトへは以下のURLよりアクセスできます。
https://www.jkeiei.co.jp/m/lp/ma/